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チャンピオンライダー [泉優二]

チャンピオン・ライダー

チャンピオン・ライダー

  • 作者: 泉 優二
  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 1987/02
  • メディア: 文庫

ウインディーの続編となるチャンピオンライダー。
ウインディーⅡよりも更に、レースを中心とした物語の
構成になっている。
各レース毎の章立てとなっていて、1シーズンのレースの
記録をまとめ、その中の一人のライダーである敬にスポットを
当ててG・Pのレースをよりドラマティックに仕立てあげたという
感じの内容。
ウインディーⅡでは事故により共にG・Pを走るバージニオを
失い、愛する人が去り、多くが敬から離れていったが
それと引き換えに自らのライディングを掴みかけていた。
そしてこのチャンピオンライダーでは、勝利を重ねチャンピオンを
狙える位置にいた。若きライダー、ケビンとの一進一退のポイント
争いを重ね、チャンピオンが決まるのは最終戦までもつれ込んだ。
果たして敬は初のチャンピオンとなれるのか。
このチャンピオンライダーでは敬は良い成績をあげているせいか、
ウインディーⅡにあったような精神的な荒さを感じさせない。
レースという厳しい状況に置かれているという事を差し引いても
荒れているという感が消えていて敬の魅力が更に前面に出ている。
レースを重ね、勝利を重ね、ライディングを必死で追求し自分の
スタイルに納得を得る過程の中で、勝利するのに大切なものは何かをも
掴んだ敬。そしてそれは自分を取り巻く様々な人達との関係を築くなか
で産まれてきたものでもあった。
そして最終戦を終えて彼を1シーズン取材してきた記事が、有名な雑誌
に掲載され、チャンピオンの価値が語られ、そこから勝者と敗者、愛と孤独、
生と死までをも含んだ人生そのものが見えてくるようで、とても印象的でした。
この物語の魅力がここに集約されているような気がします。
メカニカルであり、身の丈を越えた力をもつモンスターマシンを扱い
ながらも、そこでひたむきに生きる姿は、カウリングの中もぐり込み
タンクの上に伏せて勝利のチェッカーフラッグを目指す姿そのものであり、機械的な
冷たさはなく、情熱的。レースは極限の状況の中で競われる、およそ
非日常的な世界でありながらも、そこで生きる者たちの姿は対照的に
身近な姿であって、そうした振幅の揺れがドラマティックで魅力的に
しているなと感じました。

 


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ウインディーⅡ [泉優二]

ウインディー〈2〉

ウインディー〈2〉

  • 作者: 泉 優二
  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 1986/09
  • メディア: 文庫
コンチネンタルサーカスというサブタイトルが
付けられている。サブタイトル通り世界G・Pの
舞台で一人のライダーを主人公にし、その生き様
を、様々な人生をおくる人達で脇を固めて描かれた
バイクレース小説。
バイクに興味の無い方々には、この小説は少しばかり
読みにくいものになるかもしれません。
レース模様の描写の中には、専門的な用語がふんだんに
散りばめられていて、活字を目で追いながらも文字が
上滑りして状況を脳裏に上手く像を描けないかもしれない。
だが、この世界が好きな者には最初から物語の中に埋没
しながら一気に最後まで読めてしまう魅力が詰まっている
ように想う。
主人公である杉本敬は世界のG・Pサーキットを転戦する
プライベートのG・Pライダー。
メーカーが巨額を投じてあらゆる環境を用意して、各々が
それぞれの仕事で結果を残すことによってライバルを抑えて
勝つというスタイルに対して、敬のようなプライベーターは
その全てをほぼ自分一人かあるいは、数少ない仲間達と
こなさなければならず、各々が負担する仕事量は比べ物に
ならない。ライダーでありながらも走ることだけに意識を
集中する事が許されず、走った後にエンジンをフレームから
おろしてセッテングをしなければならない。
敬もそんなプライベータでありながらも、ワークスと充分に
渡り合える実力を備えたライダーである。
この物語は前作のウインディーの続編でもある。
前作のウインディーを読んでいないので具体的にはどんな展開から
このウインディーⅡへと流れとなっているのか判らないのだが、
どうやら敬はかつてグランプリチャンピオンの一歩手前まで
いったようであった。そして引退をしていた。
引退の原因は挫折によるものであった。そしてその事が妻や
子供との生活にも影響を与えており、引退から10年の歳月が
過ぎた時にG・Pライダーへの復帰を果たす。そしてそれと
引き換えに妻は別の人生を選択した。
二人の間にはアンナという9歳の子供がいた。
ウインディーⅡではこのアンナの姿がとても印象的である。
敬とグランプリの生活を共にしているのだが、子供でありながら
も父親や、周囲の環境もあってかかなりしっかりとしている。
9歳でありながらも、すでに大人のような振る舞いもあったりして。
そしてこのアンナの他にもいい雰囲気の登場人物が何人もいて
それぞれに魅力的だ。懐が深くて柔らかくて暖かく、アンナに
スーホーの馬の童話を聞かせてくれる老人ヘルムント。なかなか
この人物が何者なのか素性は判らないのだが、物語の中の会話の中で
語られる彼の言葉には含蓄が感じられる。
また黒人サムは、とあるレース場で敬と出会い、敬のメカニックに
なるのだが、その陽気さは周囲にいる人達の顔を笑顔に変えてくれる。
メカニックとしても優秀で、何度か敬のライディングを助けている。
他には、同じG・Pライダーの子供で父親と生活を共にしているリカルド。
アンナと仲良しでサーキットにいる間はよく二人で遊んでいたりする。
こうした登場人物達が敬の周囲をかためて物語はサーキットを転戦しながら
レースを絡めてドラマを展開していく。
プライベーターなりに奮闘する中で優秀なサムと出会い、マシーナという
女性を出会い、レースのようなハイスピードな状況とは逆にゆっくりと
事が順調に運ぶかに見えていたのだが、バイクのセッティングでサムと
諍いから、サムが去り、レースの中でライバルでありG・P仲間でも
あったバージニオが事故死し自らも骨折する大怪我をし、バージニオの
死に対する感傷をおくびにも出さず翌週のレースに強引に出場しようと
する敬に違和感を感じたマシーナも去り、そしてみんな去っていってしまった
事に対するショックを敬にぶつけ、不安や寂しさを背負い込んだアンナ
を母親の元へ送り、敬はついに一人になる。
なぜそこまでして走るのか、走る事が人の死を越えてまで優先するのか、
様々は疑問の声の中でひとり走る事に執着する敬。
そんな状況の中で孤軍奮闘しながら、死をも自らの中に取り込みながら
走る事の意味を本当の意味で掴み始める敬。
レースという日常から遠い位置に存在し、極限のスピードとバランス、
安定と不安定のバランスをモンスターのようなマシンと同調する事で
結果を出そうとする舞台を用意してはいるが、そこで掴み取る事は
日常を必死て生きている者と底流にながれている生に対する姿勢は
通じるものをこのウインディーⅡでは感じさせてくれます。
この物語は今から20年以上も前に書かれた作品で、今のG・Pの世界とは
随分と違うところも多いはず。プライベーターがG・Pのレースを走る
事が事実上出来ないのではないかと。
又、こうしたG・Pレースを舞台にした作品が殆ど描かれていない今は
小説として、活字としてレース読めるものとしては貴重かなとも思います。
20数年前、ちょうど世に売り出されるバイクもレースの世界で培った
技術を惜しみなくつぎ込まれた公道を走れるレーサーのレプリカが
席捲しており、そうした背景もあってこうしたレースの小説も上梓された
のかもしれません。そうした事を考えると今こうした小説が新たに描かれる
事は無いのかなとも思います。
かつてレーサーの血統を引くバイクに跨り峠を、街を風のように走っていた
方々には懐かしく感じられる作品だと思います。
すでに手にいれるのは難しいかと思いますが、機会がありましたら読んで
みるのもいいものではないかなと感じます。

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